たとえぜんぶ身体が消えちゃったとしても、私はちゃんとそこに残ってるわけ。
その場所でいちばんすごいのは、そこがこれ以上暗くはなれないというくらい真っ暗だっていうことなの。
灯りを消すと、暗闇が手でそのまま掴めちゃえそうなくらい真っ暗なの。
そしてその暗闇の中に一人でいるとね、自分の身体がだんだんほどけて、消えてなくなっていくみたいな感じがするわけ。だけど真っ暗だから、自分ではそれが見えない。
身体がまだあるのか、もうないのか、それもわからない。でもね、たとえぜんぶ身体が消えちゃったとしても、私はちゃんとそこに残ってるわけ。
読書家が本の中の気に入った文章を、ノートに一字一句違わずに丁寧に書き写すように。
少し前、やっと騎士団長殺しを第一部のみ購入し、それからなぜかあまり読み進められずに去年の大晦日から元旦で一気に読み終わりました。
今まで以上にこれでもかというくらい村上エッセンスがすごくて、これどうなるの!?と1ページずつすごく楽しく読めました。割とここ最近のヒットかも。自分の中で。
続きが気になりすぎてざっと読んでしまったので、またじっくり読み返します。
本当にこの本は、村上春樹の文章のセンスというか思考というかがつまっていて、正にノートに書き写しておきたい文章ばかりで困っています。
(わたしは普段から気に入った文章はノートに一字一句違わずに書き写す人なのです。)
ただ、それと同時に村上春樹のいつものお得意の描写もふんだんで、こちらとしては何作品か読んで慣れっこになってしまっているようなところもありますが、気軽に人にはお勧めできないなあ...(特に村上春樹初心者には)なんてところもあり、好きだけど勧めにくいという不思議な現象が起きています。
そして、今回特に、特に印象深かったのが、暗闇の場面。
日本の南の端、波照間島と竹富島に行った時のことを思い出しました。
本当に何も見えないくらい真っ暗で、でも星は遠く輝いていたので、村上春樹が言いたいほんとうの暗闇ではないかもしれないけれど、自分の身体さえどこにあるのかわからない感覚に陥ったのを覚えています。自分がここにいる、という感覚以外になにもない世界でした。
それをこんなに美しく表現するなんて...!(笑)
わたしは基本魂の存在、みたいなものを信じてはいないですが、このような表現をする村上春樹の文章に惹かれるということは、どこかで魂のようなものがあったらいいな、という願望があるのかもしれません。
ただ信仰とは難しいもので、魂の存在があったらいいな、と思えば単純にそう信じられるわけでもないらしく、いまだに私は人間の感情は脳の伝達神経?の作用に過ぎないとしか思えないでいます。
村上春樹自身は実際どんな思想というか、死後の世界を思っているのだろうと思うのでした。